ペルーアンデス2次、3次隊登山概要

三浦大介


 ペルーアンデス2、3次隊は各隊2名ずつの少数先鋭ということで登山目標の選出やトレーニング山行に関して、1次隊のメンバーとともに計画・準備段階から確実に実績を積んできた。登山目的はアンデス山脈の華、ペルー・ブランカ山群6000mの高峰をシンプルなアルパインスタイルで登頂すること、および特有のアンデス襞(ice runnel, fluting)のロングルートをダブルアックスで登攀することである。アンデスの有名な看板ルートとともに日本ではあまり紹介されていない山域をトレースすることも念頭においた計画を進めた。しかしながらアンデスは登山資料が思ったほど多くなく、目標の山に対して確実な情報を得ることはなかなか難しかった。

 2次隊のメンバーは当初、三浦―井内、3次隊は三浦−亀岡ということであった。2次隊は2年目の井内が厳冬期の北鎌、八っなどで氷雪の技術トレーニングを重ね、だいぶ実力をつけてきたこともあり日本人のほとんど入っていない山域にあるプカランラとチンチェイに狙いを定め準備を進めた。一方、3次隊はアンデスの氷壁ルートをターゲットにおいて、南ア岳沢などでアイスクライミングのトレーニングを行い、カラスとアルテソンラフの氷壁を狙うことを計画した。

 しかし直前になって井内が会社からのOKがもらえず不参加となり、2次隊は事実上、三浦が単独で登山することになった。三浦にとっては愕然とする事態となったが、気持ちを切り替え、現地パートナーとの山行を展開した。結果はアルパマヨ南西壁フェラーリルートの登攀、及びチョピカルキ北西稜をモレーンキャンプからの登頂という形で実を結んだ。しかしながら会員とザイルを組み登れたならばさぞかし楽しかっただろうと思うと、残念でならない。けれどもこれが今の会の現実というものだろう。むしろ現地パートナーと初対面でザイルを組み、首尾よく登れたことに満足しなくてはならない。

 3次隊(三浦―亀岡)は亀岡の高所順応を含めた登山日数が少し不足気味なこと、また目標においていたカラスの条件が悪いことなどを考えて、確実に登れそうなイシンカ谷のトクヤラフに目標を変更した。トクヤラフは悪天で予定していた西壁は断念したが、新雪の北西稜にルートをのばし、2次アタックの亀岡とともに5日間で登頂に成功した。

 今回の2、3次隊のアンデスでの我々の新しい成果としては長年の夢であったアルパマヨでのアンデス襞・フルーテイングの登攀、それに新雪の積もったトクヤラフのルートファインデングと若干のチーズアイスの登攀が楽しめた、ということだろう。ただしグレード自体はそれほど高いものでは無く、月並みな山、ルートに終わってしまったことは否定できない。我々の技術・体力を持ってすればもう少しやれたのではという思いもある。そろそろ一般ルートからのこういった登山も終わりにしなければ、さらなる発展は望めないかもしれない。とはいえ天候の周期にも恵まれ、新天地での短い期間で3座の登頂という成果を総合的に評価すれば70%程度のできということで、今後につながる結果が得られたと思う。次回はもっとトレーニングをしっかりと積んで、何人かの会員とともに再びこの地を訪れたい。その時はバリエーションルートのみならず、できれば新ルートからの登頂を、そしてワイワッシュのビッグルートにもチャレンジしてみたい。

 登攀装備に関しては日本からすべて持っていった。以下にリストを示す。ビレイ支点に有効だったのはスノーバーの縦埋め、それにアイススクリューである。またエピガスカートリッジも代替品が少量なら現地でも購入できるのでビバーク用としては考えられることが判った。食料、燃料、薬品に関しては詳細な説明は1次隊の報告にだぶるので割愛する。


1、 登山装備
(1)共同装備
・エスパース2〜3人マキシマ一式、銀マット2、スノーピーク、コールマンピークワン、ベンジーナ(現地)アルミお盆、水ポリ、ローソク、EPIヘッド1本、EPIガスボンベ4本(現地)、ローソク、コッヘルセット、修理具(ドライバー、ガムテープ、ペンチ、針がね、ヤスリ、六角レンチ)、カメラ、フィルム(含むスライド用)、8.1mmx50mザイル2本、スノーバー4本、アイススクリュー8本、ロックハーケン各種6枚、ナッツ、エイリアン少量、雪袋(土のうタイプ)4枚、スコップ1、テルモス1、無線機2、ツエルト

(2)個人装備
冬季衣類装備一式、ハーネス、バイル、アイゼン、ピッケル、ヘルメット、ロープマン、エイト環、 ATC,、カラビナ、シュリンゲ(テープ、ロープ、ロング)、懸垂用捨て縄、環付きビナ、サングラス、ゴーグル、日焼け止め、ノート・ペン、ホイッスル、磁石、ナイフ、ライター、ローペ、食器・武器、水筒1L、シュラフカバー、シュラフ、ヘッデン、地図など

2、食糧計画
・行動食は各自(ほとんど現地購入)
・BC以上の食料として各隊とも朝4,夜4、飲み物類は各種を日本で購入
・その他は現地購入

3、医薬品
・外傷薬、内服薬、ダイアモックスなど日本から持参。三浦、亀岡は特に使用しなかった。