スイス ヴァリスアルプス 
ヴァイスホルン東稜
2003/07/24〜25
酒井謙治、三木聰(記)

7/24(木)曇り後一時雨または雹
8:30ティッシュ駅〜9:00登山口〜12:20ヴァイスホルンヒュッテ

7/22 ブライトホルン(4165m)山頂から。高度順化に使った山。
 ヴァイスホルンの登山口へはツェルマット駅の隣のティッシュ駅まで電車に乗りそこから歩いて行く。アルプス4000m峰登山ガイドではティッシュ駅のさらに隣のランダ駅から登山口に行くことになっているが、地形図を見るとティッシュ駅からでも行けるので、そちらのほうが電車賃の節約になる。
 登山口近くまで来て、これから登る谷を見上げると曇り空ながらヴァイスホルン周辺の山々から流れ下る氷河を見渡すことができる。登山口から今日泊まる山小屋までは「うんざりする1500mHの登り(5時間)」とガイドブックに記載されている。スイスに来てからも重い荷物を背負って5時間も歩いておらず、体力トレーニングも全くしていなかったので三木は今日歩いただけでばててしまうのではないかと危惧する。

 「今日はアプローチなのでゆっくり登ろう」という酒井君の掛け声に、ちょっと安心するも、2時間ぐらい歩いたところで小雨が降り始めたことや、とっとと登ってしまいたいと思ったことにより、三木は快調に飛ばしてしまい、酒井君に「飛ばし過ぎ」と怒られてしまう。

 途中、曇り空ながら谷の向こうに見えるドーム等の山々や道端に生えている花等を堪能しながら、快調に飛ばしたせいで3時間20分程で山小屋に着いてしまう。
 山小屋は定員50名で小さく、ひっそりと静かなたたずまいで立っており、なかなか良い雰囲気。酒井、三木が到着した時点ではまだ誰も泊まりに来てなかった(最終的には10名ほど宿泊した)。
荷物をまとめた後、氷河の横断地点まで偵察に行く。氷河の横断地点までは30分もかからず着く。アイゼンも持って来なかったので結局たいした偵察にならなかったが、今年は猛暑で崩壊が激しいと聞いた氷河は安定していそうでほっとする。
 小屋に帰ってからは時間を持て余してしてまったので昼寝をする。
小屋の料理はパスタ(変わった形の)にソーセージ、チーズをあえたピーマンが混ざったような料理がメインで、トマトのスープ、デザートもでて意外に美味しい。
 夜も8時頃になると(まだ明るい)空の一部から晴れ間が見え始め、明日の天気に期待が持てるようになる。小屋の主人の奥さんにも明日の天気を聞いたところ一言「FINE!」と言われたので、明日の天気に期待して9時半頃就寝。

7/25(金)晴れ
3:00ヴァイスホルンヒュッテ〜8:00(7:00頃だったかも)フリューシュテュックスプラッツ(ヴァイスホルン東稜上にでたところ)〜9:30ヴァイスホルン東稜(岩稜と雪稜の切れ目)〜ヴァイスホルン頂上(酒井氏のみ)〜12:15ヴァイスホルン東稜(岩稜と雪稜の切れ目)〜16:20ヴァイスホルンヒュッテ着〜17:10ヴァイスホルンヒュッテ発〜19:20登山口〜20:00ティッシュ駅

 2時に小屋の主人の声に起こされる。朝食は持ってきたパンを食べてさっさと済ませ、3時に出発する。
 外はまだ真っ暗闇だが、星空が見え素晴らしい天気。氷河の横断地点までは昨日偵察に来た通りすぐに着く。そこからアイゼンを着け、アンザイレンし酒井君先頭でコンテで進む。
 これから取り付く東稜から派生する支尾根はぼんやりと見えるのだが何処から登るのかは判然としない。
 氷河と氷河がぶつかって急斜面となったところを登ったところで、その支尾根に乗ったと勘違いし、氷河上をどんどん上部に登ってしまう。支尾根上部の岩壁の取り付きとなるはずのところは全然分からず、今まで目標とする支尾根登ってきたように思えなかったので、引き返すことにする。下ってみると他のパーティーが支尾根の取り付きを登っているのが見えた。

ヴァイスホルン東陵より山頂を望む

ヴァイスホルン東陵より
 支尾根の取り付きはルンゼのようになって結構急に見えるが、そこを直登しなくてもジグザグに踏み後が付いてるところがあり難なく登れる。ここからはアイゼンを外して進む。支尾根の下部は殆ど歩いて登れるが途中スラブのような場所がでてきて、ところどころ嫌らしい。行きは暗くて分からなかったが左の雪面を登ったほうが良い。5時過ぎ頃からあたりは随分明るくなり、支尾根の上部に近づいたところで先行パーティに追いつく。
 支尾根の上部岩壁はかなり立って見える。支尾根の上部岩壁では前日の夕方降った雹で踏み後が不明瞭になってしまっており、本来のルートを途中で踏み外したようだ。そんなに難しいという訳ではないが、岩が脆く、何処にも残置支点もないところを酒井君先頭でコンテで登り結構ヒヤヒヤする。
 フリューシュテュックスプラッツと呼ばれるヴァイスホルン東稜の支尾根から東稜上に出た所に付く頃には、三木は日頃のトレーニング不足による体力不足と、高山病による頭痛でかなりばててしまう。最高の晴れ空の穏やかな天気のもとに広がるバイスホルン頂上につながる鋭いナイフエッジな岩稜の景色や、遠く見渡せるモンテローザ、マッターホルン等のヴァリスの山々の景色を堪能できることを救いとして三木は何とか頑張って東稜の岩稜帯を進む。


ヴァイスホルン東陵より
 東稜からは再びアイゼンを付けて一部悪い3級程度の場所をスタカットで進んだ以外はほぼ岩稜帯をコンテで進む。
 岩稜帯が切れて雪面となるところで、三木はこれ以上進むと体力を消耗して帰りに危険な状態になるのではと思い、酒井君のみ頂上往復してもらうことにする。上部の雪稜は結構急なところもあり、カチカチの硬い氷河の斜面は一部3級程度ありクレバスもあって悪いとのこと。頂上からはモンブランも見渡せ良い景色だったようだ。
 帰りは岩稜には殆ど残置支点はなく、スピートアップの為にはコンテでクライミングダウンするしかなく神経を使う。ヴァイスホルン東稜の支尾根上部の急な下りは、行きにあった雹が溶けていたせいで踏み後が見え、さほど問題なく下れた。支尾根下部は横の雪面をいっきに下り、ヴァイスホルン小屋にはすぐに着くことができた。ヴァイスホルン小屋で一休みして後は登山道をひたすら下る。駅に付く頃には三木も酒井君も相当疲れてグロッキー状態でした。

 ヴァイスホルンはクライミング技術的にはすごい難しい箇所はなかったが、全然残置支点もなく、スタカットで登っていたら時間も無いのでコンテで登らなければならず、三木にはまだまだ技術的にも体力的にも実力不足でした。終始酒井君にコンテでリードしてもらってなんとか行けたと思います。酒井君有難う。早く山に独力で行ける力を付けたいものです。
 ヴァイスホルンは静かで良い山なのでスイスの有名な山に行った人にはお勧めかもしれません。