八ヶ岳 広河原沢 三ルンゼ
2004/2/28
中島(記)、酒井
コースタイム:
06:20 船山十字路 →07:00 二俣 →10:30 3ルンゼ分岐 →11:00 大滝 →14:00 南稜P3下 →16:30 旭小屋 →17:00 船山十字路

大滝をリードする酒井

ツララ氷手前の中島
 トレーニングもせず、久しぶりのアイスクライミングできわどい登りをしてしまいました。反省も込めて記録します。

 3ヶ月の休職期間も残り3週間。中米の旅行で山へは1ヵ月半のブランクがあるものの、三浦さんとの3スラの前にトレーニングも兼ねて、アイスを登り込んでいる酒井さんと週末の計画を例会にて即決。約1ヵ月前に嘉彦君と向かったものの、誤って左俣に入ってしまった広河原の右俣から3ルンゼへのアイスルートへ向かう。
 船山十字路から約40分で左俣との分岐(7:00)。前回はここで左俣へのトレースをたどってしまったらしい。そのまま本谷を進むがトレースがなく思わぬラッセルを強いられる。部分的にトレースを見つけるものの、外すと膝上まで埋まることも。雪はスカスカで締りがない。計画書に酒井さんが入れてくれたにも関わらず、冬合宿でバンドが切れたワカンを中島が放置していたため二人ともワカンなし。しかしたとえワカンがあっても役に立たなかっただろう。右俣との分岐を過ぎ、3つほどのナメ滝をフリーで超える。今年は春の訪れが早いのか、氷結状態はあまりよくない。酒井さんは氷を踏み抜き、片足をわずかに濡らす。
 いくつかの紛らわしい右からのルンゼを悩みながら進むが、ルートガイドにある「1・2ルンゼ出合の大滝」が正面に見えたところで左岸に入る谷が3ルンゼである(10:30)。のんびりモードが抜けないまま、ここまで船山十字路から4時間もかかってしまった。今日は1日天気の心配をする必要がないため、多少登攀に時間がかかっても南稜は下れるとの思いがある。3ルンゼをたどるとようやく登り甲斐のありそうな滝が見えてきた(11:00)。3段、約30mの大滝だ。ここはじゃんけんで勝った酒井さんがリード。右にある岩に打ち込んだハーケンでセルフを取り、中島がビレイ。さすがに今年はスキーにも行かずアイスを登り込んでいるだけあり、去年とは明らかに酒井さんの動きが違う。氷は意外と硬く、しっかり打ち込めばアックスはばっちり決まる。ラインはどのようにも取れるがトレーニングのためなるべく垂直部分を選んでのリード。
 この大滝を抜けると二俣になっており、ガイドによるとどちらにも6m〜8mの滝があるらしいが、見えている2段のツララ氷を登りたく、右へのルンゼをつめる。ハング気味の5mと3mの2段の滝を中島のリードで登りだす。中央から右半分にかけては足元にも届いていないツララの集合のため登れない。左の端から中央上部に乗り移るラインを取る。垂直に入る前にスクリューを1本セットし、意を決して登りだすが筋力不足の左腕にナジャカップが重く、スイングがヘロヘロでとても叩き込めない。氷の硬さが恨めしい…。思わず「テンショ〜ン」と口走るが、右のバイパーを何とか打ち込みフィフィレスト。そのままもう1本スクリューをセットし、一度は右手1本での宙ブラリ状態になるも右足はスクリューの頭に、左足は側壁の岩にかけた無様な姿のまま、何とか落ちずに乗り越す。正直これまでのアイスで一番きわどい登りとなってしまった。酒井さんもさぞかしヒヤヒヤしたことだろう…。ホントにすみませんでした。2段目は酒井さんにお任せ。左脇からの易しいラインで上段の3mをクリア(13:30)。南稜のP3がスカイラインに迫って見える。稜線まで立った氷がないことを確認し、木にセルフを取って登攀具のパッキングと小休止。ルンゼをつめて南稜に到達(14:00)。これで何とか無事に帰れそうだ。
 南稜からは阿弥陀中央稜のリッジがはっきり見え、赤岳の主稜や権現岳への縦走路、権現岳東面の雪稜もよく見える。遠くには雪が解けて一部に黒い筋を見せる富士山が見える。天気のよい南稜は照り返しがまぶしく、日焼けしそう。ルートは大混雑でテント設営中のパーティも含め15人程とすれ違う。日曜の天気を考えるとできるだけ上がっておいた方がよいような気もするが、ずいぶんと下部でのテントも見た。トレースは明確ですぐにアイゼンが必要なくなるが下部の樹林帯に入ると薄く積もった雪が凍りつき、非常に滑りやすい。12月の三シャ峰ルンゼからの下りで足の爪が死んでしまい、先日剥がれたばかりなので少々気になるが、一昨日のスカッシュで再発した左膝の方はなぜか全く痛くない。酒井さんはラッセルでも足場が悪くてもどんどん進んでいく。旭小屋を経由して林道に到着(16:30)。泥だらけの林道を辿り、コーナーを曲がると船山十字路の駐車場がすぐだった(17:00)。
 翌日の行動について二人で相談し、八ヶ岳東面や甲斐駒の氷を検討するもアプローチの短い南沢大滝でアイストレーニングとする。しかし二人とも今日の行動で少々疲れており、口には出さないがそのまま帰ってもよい雰囲気。しかしせっかくなので真赤な夕日が林道を照らすなか美濃戸口に移動し、明るいうちにチェーンをつけて美濃戸山荘の駐車場へ入る。テント設営後、冬合宿の残りの食事を済ませ、酒井さんの日本酒で酔っ払い8時半には就寝。翌朝起きると5cm程の雪が積もっており、すでに雨まじりの雪が降っている。雨のアイスクライミングほど不快なものもない。天気を言い訳にして帰京決定。もみの湯は10時からだったので温泉も諦めてそのまま高速へ。12時には自宅に着いていた。