森吉山 ノロ川 桃洞沢〜赤水沢
2003/09/13〜14
L.佐藤(敦)、竹内、高山、松原夫妻、楢見館


9月13日(土)

 午後新幹線こまちにて角館へ。角館は我がふるさとから程近いが駅に降り立ったのは初めてだ。武家屋敷通りの喧騒とは裏腹に駅周辺は静かなたたずまいだ。駅至近のレンタカー屋で手続きを済ませ大量の飲み物つまみ等々買い出し後、一路森吉方面へ。台風とともに北上。途中の路面には台風で吹き飛ばされた木の枝がところどころに散乱している。空模様は雲の合間に月が出たり入ったり、雲の流れも早く、なんだか怪しい雰囲気だ。ピンポイントの天気予報をみると明日は80%の確率で雨の予報である。
 しばらく北上後、今度は東に進路を変える。天気はますます怪しくなってくる。幸い、雨はまだない。森吉山荘を左に見て、今夜宿泊予定のノロ川キャンプ場を目指すが雲の流れはますます早く、また、途中野ウサギが横切ったりしてなんだかいやな予感、と思う間もなく前方にはなんと、倒壊したぶなの大樹が!
 その樹木は完全に道路を横切る形で倒れている。車から降りて様子を窺うが到底人力で動かせるような代物ではない。あきらめて、来た道を引き返し、明日宿泊予定の森吉山荘に向かう。この頃より風雨しだいに激しくなる。事情を話し一夜の宿を懇願する。宿の支配人は「緊急事態ですから」といってわれわれを大広間に案内してくれた。その後、窓の外は暴風雨が吹き荒れた。

9月14日(日)

 朝おきてみると台風は一応通り過ぎたようだ。だが、なんとなく空模様ははっきりしない。宿の人に聞くと問題の樹木は朝一番で車が通れる位に片づけられたとのこと。なかなか対応が早い。どうしようかと迷うところだが、途中まで行ってダメなら引き返そうということでとりあえず支度をして桃洞沢に向かう。次第に天気は回復し青空ものぞくようになった。クマゲラ保護センター着10時ちょっと前。1パーティが登る準備をしている。地元のパーティのようだ。われわれも全員で協議する。協議中、後からきたおじさんに、「今日は水量が多いから危ないぞ、装備はちゃんと持ってるか、ガイドがいないとダメダ」などとありがたい(?)アドバイスをもらう。気になるのは水量だが、行っていけないことはなさそうだ。「行こう」という結論に達したあとの行動は早かった。
 保護センターから1時間ほどで、例の「桃洞の滝」に到着する。ここを訪れた男はその滝を拝む前には沢の水で一度身を清めてから、ということになってるらしい。われわれ男性軍もその儀礼にしたがう。(そんなのないって!)
 実際の姿はまあ、写真のとおりですね。水量はかなり多め。登るのは左岸をステップにしたがっていけば問題なし。その後は延々と続くナメ、ナメ、ナメである。台風の通過後にしては倒木も少なく荒れた印象はない。この沢には直線がない。ほとんど曲線の世界だ。側壁の岩もほんとうにまろやかな曲線を描いていて心が休まる。人生に少し疲れた中高年には本当にやさしい沢だ。
桃洞滝はやや笹にごりしていて水量も多いが、ステップが切ってあるため、 ノーザイルで簡単に登れる。 男滝(2段10m)は、記録にはロープありとあるが、ロープの残骸が落ちているのみ。右岸を高巻こうとしたが、上までいけずに撤退。滝の右壁にザイを張って 登る。下から見た時は、わからなかったが、トラバース箇所は約20cm幅 の溝になっており、難なく通過できた。

 男滝は一度高巻きに入ろうとするが、ルートが厳しく断念。左岸にロープを出して超える。出発時間がやや遅かったため、休憩もそこそこにして先を急ぐ。本流を右に見送り水量の少ない左俣に入る。地形図を確認しながら少々のやぶこぎで稜線にあがる。高山さんのGPSにも助けられ難なく赤水沢への下降点へ。沢に入るとこちらもまったく、ほんとうに舗装されたようなきれいなナメ、ナメ、ナメの連続である。各自好きなルートでナメを駆け下る。下降は早い。途中、一度の懸垂を交えてウサギ滝に到着。こちらは左岸を2回の懸垂で降り立つことができた。あとはもう、一般道のようなものだ。明るい時間に戻れる確信が得られたので最後のナメ(もう飽きた!ここは秋田?なんて言った人もいたけど)を十分堪能し出合いに戻る。

赤水沢の2段10mの滝は、右岸の残置シュリンゲを利用して20mザイルで懸垂。 ナメナメナメ。

 とりあえず、予定の行動を完遂!ってことで、その夜はまたまた阿鼻叫喚の大宴会となったことは言うまでもない。(まったく飲んだくれなんだから、って言わないで!)

 翌日は予約の新幹線にあわせてのんびり(?)角館までのドライブを楽しむ。道すがら、道端の無人野菜売り場や道の駅でM夫人とN夫人が持ちきれない程の野菜を買う。二人の買い物欲はとどまるところを知らない。(そんなに買ってどうすんだー、なんてことは思っても言えない?!)
 駅前で昼食(飲み助は当然流動食)後、新幹線の人となる。新幹線はいいね!渋滞はないし、酒は飲めるしで、飲み助には天国だぁって?!
(以上 竹内記)

□コースタイム

クマゲラ保護センター10:10〜桃洞滝11:05〜男滝12:15〜890mコル13:30〜赤水沢本流出合い14:00〜うさぎ滝15:00/15:40 ノロ川出合い17:00〜クマゲラ保護センター17:40

□リーダーコメント

 桃洞沢までの道のりはかなり、かなり遠い。秋田の角館から車で約2時間半である。でもその苦労の甲斐がある、魅力たっぷりの沢だ。桃洞沢、ウサギ滝、男滝など、見せ場シーンの連続。桃洞沢上部にある、秋田杉の原生林のすばらしさ。いたるところにおいしい水が沸いている。そして、これでもか、これでもかと続くナメ、ナメ、ナメ、ナメ・・・・
 でも美しいものには必ず落とし穴がある。ナメも所々にクレパスのような溝がある。風景に見とれていると、落とし穴にドボンと落ちてしまう。あぁ・・・私は何度、落ちてしまったことか・・・
 台風あり、ナメあり、温泉あり、野菜の買い物あり、そして松原さんのダジャレ、ダジャレ、酒、酒、酒・・・の本当に楽しい山行でした。メンバーの皆さん、ありがとうございました。
(佐藤敦記)

□ 豆知識

 春の山菜、ミズは皆さんよく知っていると思う。おひたしにしたり、ゴマ合えにする。そのミズが直径0.5cmくらいの小さな実をたくさんつけることをご存知であろうか。森吉山荘にそのミズのおひたしが出た。ちょっとヌルっとした感触とシャキシャキとした歯ざわりが食欲をそそる。さっぱりして、とてもおいしい。皆、ミズの実のファンになってしまい、山荘から角館までの帰路、道の駅で販売していた実を皆、買い求めたのである。ぜひ、皆さんもお試しを!
(佐藤敦記