尾瀬・燧ヶ岳ナデックボ
2003/05/04〜05
L亀岡、永田、他2

5月4日(曇り)
大清水−三平峠−尾瀬沼−長蔵小屋(泊)

 私が黒部横断をして山岳部の引率をしなかったので、春合宿・唐松岳アタックがなくなった。今回の山行は罪滅ぼしである。大学が忙しくて3日間の合宿に参加できない永田さんも加わった。
 亀岡が寝坊して、他のメンバーを1時間以上待たせてしまった。すみません。
 大清水は水芭蕉と人と車で一杯。しかも暑い。さっさと人混みを後にする。一ノ瀬から靴を履き替えて登山道に入る。黒木の森に入ると、ようやく一面の雪になる。
 三平峠から尾瀬沼に向かって、さっそくフリートレックで一人滑走する。靴は革登山靴、アタッチメントはなし。北面で雪が堅く、前後のバランスを取るのが難しい。
 尾瀬沼周辺はまだ一面雪景色だが、沼明け(融解)間近で横断はもう怖い。曇天の燧ヶ岳はさえない。湖畔の雪面を行く。シール歩行は上々だ
 長蔵小屋で、旧知の人々と再会の挨拶を交わす。実に6年ぶりだ。かつては年に100日以上過ごしていた場所。ここに客として泊まる日が来るとは…。
 一休みのつもりが、小屋にはいるとくつろいでしまい、熟睡。その間、永田さんはスケッチに出かけていた。さすがである。入浴、食堂での夕食、個室と布団、薪ストーブの談話室での語らい、穏やかな夜。


5月5日(晴)
長英新道−俎ー−ナデックボ−長蔵小屋−三平峠−大清水

 4時半起床、おにぎりを食べてすぐ出発。良いお天気だ。大江川を橋で渡り、浅湖湿原東の林間からアオモリトドマツの緩斜面を登っていく。稜線に出て、急坂をやりすごすと、ダケカンバの緩斜面になる。冬の長英新道で、滑って面白いのはここより上。ミノブチのコルから右の雪面にトレースが続くが、山頂下がセラック帯になっており、そのまま進めない。先行パーティーが苦労している。最初から左の夏道に入ればなんでもない。俎ー山頂からの展望は今ひとつ。晴天だが、霞がかかっている。
下りは御池岳を回り込んで、ナデックボ(雪崩窪)に入る。おそろしげな名前の沢だが、長蔵小屋で長い間越冬してきたTさんや、地元・檜枝岐の人に聞いても、ここが雪崩れたのを見たことはないという。同じような地形の景鶴沢は、春先かならず底雪崩を起こしているのに、不思議である。
 出だしがちょっと急だが、せいぜい35度。大分日も高くなり、南面の雪はすでにゆるんでいる。快適に滑降。山岳部員には途中からフリートレックをはかせたが、うまく滑っていた。永田さんはシリセード。あっという間に尾瀬沼到着。北岸を歩き、長蔵小屋でデポを回収。のんびりと歩いているが、日差しが強くて結構疲れてきた。三平峠からしばらくはスキーを使えるが、尾根をはずれて南面に入るともうだめだ。スキーを脱いだ後は、一日の間で大分融けた雪交じりの登山道を下り、一ノ瀬で靴を換えて大清水までフキノトウを摘みつつ歩いた。のんびりした二日間のしめは、ラッシュアワーなみの満員電車であった。
5/5 尾瀬沼にて。燧ヶ岳を背に。 5/5 マナイタグラ山頂直下
5/5 ナデックボ上部 5/5 尾瀬沼に向けナデックボを滑る →MOVIE


フリートレックについて

 ロシニョールの「フリートレック」は、長さ90cmの短い山スキーである。シールとスキーアイゼンが付属。メーカーは、滑れるスノーシュー的に考えているようだ。昨シーズン購入したものの使わずじまいだったこの道具、初めて本格的に利用した。すでにいろいろな人が使っているので、今更という気もするが、使用感などを簡単に報告したい。

 今回は、革登山靴+フリートレックの組み合わせで使ったが、それが活きる山行だった。春の適度に締まった雪の歩行と滑走は快適。短くて軽いので、中型ザックに付けてもほとんど飛び出す部分がなく、ヤブの中を歩くこともほとんど苦にならない。山のスケールが小さく、スキーの着脱が比較的多いのにもフィットした。
 ただ登山靴でのスキーは、それなりの技術が必要である。足首を自分の力で固定して常にスウィートスポットに乗っていないと、後傾して転倒する。また堅雪では、「くの字」の外向姿勢をとらないと、エッジが立たない。カービングスキー全盛時代の昨今では、矯正対象だ。(これはフリートレックに限らず、登山靴で滑る共通の技術であろう。)
 その上で、登山靴で滑るメリットが大きい道具だという考えは変わらない。登攀、残雪期のヤブ山、沢登りなどとの組み合わせなど、歩きの部分の比重が高い山行形態には、たしかにぴったりだと思う。
 兼用靴ではけば、滑りはぐっと楽になるだろう。ファンスキー同様、スキーの取り回しが楽で、パウダーも斜度があれば一応滑れそうだ。兼用靴との組み合わせは、山スキーを始めたいが、スキーの練習に時間を割きたくない人におすすめできる。板、締め具、シール、アイゼン一式のセット販売価格が比較的安いのも良い。また、パウダーよりザラメが好きな人、体力のない人にも良いと思う。
 ラッセル能力については、それなりにありそうだが、よく分からない。発展的に、120〜130cmくらいの山スキー+取り付け式シールの可能性について考えたくなる。北海道では、こういう組み合わせで使っている人は多いと聞いた。厳冬期の山深い地域で、継続登攀を行う時に威力を発揮しそうだ。
 私は、残雪期のブナ林をのんびり歩くときに使うことにした。森を見る視線の動きと道具のスピードが、ちょうど良い。