後立山 鹿島槍天狗尾根

2002年12月29日〜2003年1月2日
メンバー:L川村雅祥、村山日出夫(報告)、野村美弥子、冨永忠宏(元会員)


12月29日(日)雪

鹿島槍スキー場 7:20 大谷原分岐 7:45 荒沢出合 12:50 BP(1360m付近) 15:30

 29日朝、冨永君と大町駅前で出会う。彼の予定は天狗尾根〜鹿島槍〜五竜岳縦走だ。鹿島槍までいっしょに行動することにする。 タクシーでスキー場前まで入る。雪が降り続く。
 大谷原の分岐で、赤岩尾根に向かう踏跡と分かれ、大川沢左岸をラッセルしながら、荒沢出合を目指す。途中何度も渡渉し、靴下を濡らしてしまう。
 冨永君は五竜縦走を中止し、赤岩尾根下山に変更する。4人で喘ぎながらラッセルを交代する。5時間近くかかって、ようやく荒沢出合に到着。疲れきり、ザックが重く感じる。
 出合で、後続の8人パーティに追いつかれる。
 荒沢を少し入った天狗尾根の張り出し末端に取り付く。後続パーティはわれわれよりやや上流の斜面に取り付く。
 空身でラッセルしながら傾斜の強い樹林帯の支尾根を上り詰める。ようやく大木の下の平坦地に辿り着く。幕営。無線交信。岡村パーティの行動を確認する。

12月30日(月)晴

BP 8:45 第一クーロアール下 11:50 第二クーロアール下 14:50 2326mピークBP 15:50

 朝、青空の広がる樹林帯をラッセルする。1550m付近で8人パーティのトレースと合流する。
 第一クーロアールは岸壁の右を巻き込むように、雪の詰まった浅いルンゼを登る。先行パーティ8人が団子状態で登攀しているため時間がかかり、追い抜こうとした冨永君が注意を受ける。待っているより仕方が無い。
 先行パーティが抜けたあと、60mザイルを張る。抜けきるまでザイルが足りず、2本繋げる。雪の状態が安定していれば、ザイルは不要かもしれない。
 痩せ尾根をたどり、一度鞍部に下りてから登り返し、第二クーロアールに着く。長い待ち時間の後、登攀開始。右側は崖になっており、左側にはブッシュがまばらに上に続いている。全体としてはだらんとした雪面で、雪崩の危険性はかなり大きい。クーロアールを左上にトラバース気味に登り、ブッシュで支点を取る。抜けたところが2326mの広くて丸いピークで、通称天狗ノ鼻と呼ばれる地点らしい。
 小舎岩に続く雪壁が見える。幕営地としては申し分がない。遠見尾根、五竜岳も間近に望まれる。 夜、交信。岡村、英明パーティの他は不通。

12月31日(火)雪

BP 6:40 小舎岩上岩場下 15:30 ザイルフィックス終了 16:30 小舎岩BP 17:10

 出発の支度をしている8人パーティの脇を通り抜けてラッセルをする。雪庇の踏み抜きを注意しながら進むと、5mほどの雪壁に突き当たる。右側は切れ落ち、左側は雪の詰まった斜面。ザイルを出し、空身で登り上がるとナイフエッジが50mほど続いている。
 ナイフエッジの中間地点でわれわれがザイルを束ねていると、後続のトップが追い抜いてザイルを伸ばした。
 再び団子状態の先行パーティに遮られて時間待ちとなる。1ピッチ1時間半ほど待たされる。
 小舎岩まで雪壁と雪尾根が続く。小舎岩付近は良い幕営地だ。先行パーティが先へ進めば、われわれは小舎岩に泊まろうと話す。 期待を裏切って、先行パーティは小舎岩泊まり。仕方なく、先へ進む。
 8人パーティはルート工作をするために3人ほどザイルを持って空身でわれわれと共に進む。
 小舎岩から雪面を上がると、岩場に遮られる。川村Lがザイルを伸ばす。右にきわどいトラバースをして、ブッシュ混じりの雪面をラッセルで上がる。ザイルぎりぎりで岩壁に取り付き、ザイルを固定したところで時間切れとなる。 テントを張るために小舎岩まで戻る。整地して8人パーティの脇に幕営。すでに薄暗くなっており、寒さと長い時間待ちを強いられたため、消耗が激しい。岡村パーティと交信。五竜岳往復で遠見尾根下山の連絡を受ける。

1月1日(水)晴れ

小舎岩 9:15 岩場上 10:20 荒沢の頭 11:20 鹿島槍北峰 12:25 南峰 13:30 冷池山荘 14:55

 下界は雲海だが、山の上は快晴。穏やかな、美しい朝だ。
 8人パーティと岩場で団子状態になるのを避けるために、彼らが岩場を抜けるまで待機する。
 固定ザイルをたどって岩壁に辿り着く。直上ルートはザックを背負っての登攀は難しい。冨永くんが登り、ザイルを左に回す。
 岩壁を左に少し回りこみ、バンドに上がり、直上する。重いザックを背負っているとバランスがとりづらい。
 岩場の上は平らな雪面のピークになっていて、幕営できる。
 荒沢の頭へは、痩せ尾根の雪稜から岩峰の右の雪壁を詰めていく。右手に鹿島槍北峰、左手に東尾根の岩壁が望まれる。東尾根は数人のパーティが岩壁の下に集結している。
 荒沢の頭で休憩。東尾根からは、まだ誰も登って来ない。
 鹿島槍北峰〜南峰と辿り、冷池の避難小屋に午後3時少し前に着く。
 夜6時に交信するが、何も入らない。

1月2日(木)風雪

冷池山荘 7:00 赤岩尾根下降点 7:50 懸垂終了点 10:20 高千穂平 11:20 大谷原 14:25 スキー場 14:50

 夜半から風雪強く、雪も積もってしまった。
 小屋の外に出ると風雪のため視界もない。5張りほどテントがあるが、誰も動かないようだ。
 ラッセルをしながら赤岩尾根の道標が
立つ地点に着く。風雪で体が浮き上がる。
 ここからの下降は、深雪をトラバースしなければならず、もう少し上のピークまで登って下降することにする。
 下降点には赤布のついた竹竿が立って
いた。赤布を辿り、下降する。赤布は途切れ、広大な急斜面の雪原に遮られる。尾根のルートは、視界が利かないため判断できない。懸垂でまっすぐ下りてみることにする。土嚢をアンカーにするため、尾根上で雪を掘っていると這松が現れ、懸垂の残地シュリンゲが出てきた。
 60mザイルと50mザイルを繋げて下降する。下半身が雪に沈み、不安定なこと夥しい。
 急斜面の雪面にぽつんと立つ立木でピッチを切り、再びザイルを繋げて直下の尾根筋にたどり着く。この尾根が赤岩尾根であることを慎重に確認して、ようやく雪崩の恐怖から開放される。    尾根を下降して高千穂平に着く。ほっとして気が緩んだか、尾根を北側にたどり、ルートを外してしまった。
 慌てて強風の中、高千穂平に戻る。
 堰堤に下りてから、雪原をラッセルする。大谷原までの道のりは予想以上に遠かった。
 スキー場でタクシーを呼び、大町温泉郷へ行く。風呂に入り、猛烈に腹が減ったところで、大町駅前の七倉荘に投宿。ビールと酒で無事下山を祝った。